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桜の樹の下には

うちには、俺、レオ、そして1匹の鯉がいる。 野鯉だ。 名前は、ない。

この鯉は、レオがうちにやって来る半年ほど前からいる。
近所の子供たちが川遊びでとってきて道端でワイワイ言ってたところを覗き込んだら、
子供らしい無邪気さで、1匹あげるよ、と言われた。 10cmほどの、小さな野鯉だった。

きっと大きくなるだろうから、と大きな水槽を買い、濾過器や砂利や水草も買い込み、
栄養価の高い赤虫を与えて育てていたらぐんぐん大きくなって、30cmを超えた。

レオと一緒にこの鯉が泳いでいる姿をよく見ていたのだが、ここまで大きくなると
水槽の中にいさせるのがだんだんかわいそうになってきて、もういい加減自然に
戻してやろう、思った。


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どうせ放すのなら、できるだけ大きくて広い所にしてやりたい。 
うちから一番近いそういうところは多摩川なので、カメラを持って出かけた。


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水が温む3~4月になると、鯉は浅瀬に集まってきて、産卵する。 岸部に立つと、
あちこちで鯉たちが水面から跳ね上がって、大きな波紋を作っているのが見える。
今なら、たくさんの仲間に出会えるだろう。

かつては「死の川」といわれたこの川も、今では鮎や鱒が遡上するくらい綺麗になった。
鳥もたくさん集まっているし、釣り人たちがいつも糸を垂らしている。
鯉は30年くらい生きるし、中には50年以上生きて、大きさが1m以上になるものもいる。

さよなら。 今までうちにいてくれてありがとう。 この先も、ずっと長生きしておくれ。
そう思いながら、泳いでいく後ろ姿を見送った。

川沿いの道には大きな桜の樹があった。 今年の桜の開花は、例年よりも早い。
まだ七分咲きくらいだが、それでも、花は枝々からこぼれんばかりに咲いていた。
それは、まるで早い春に吹雪いてできた雪の花のようだった。


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桜は、どうしてこんなに綺麗なんだろう。
この大きな樹の下で、30分以上も見上げて眺めていた。

桜の樹の下には屍体が埋まっている。 

そうまで言わなければ、この不思議な美しさを表現しきれなかった
その気持ちがよくわかる。


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水槽からクーラーボックスへ移す時、鯉はとても暴れて、廊下も俺もずぶ濡れになった。
レオは驚いて壁の蔭に隠れたが、すぐに心配そうに顔を出してその様子を見ていた。


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                         【 何してるの? 】


5年近く同じ屋根の下で暮らしたのに、悲しくなかった。

鯉のような大型魚を、一般家庭で飼い続けることは難しい。
鯉にとっても、水槽の中は幸せではないだろう。
いずれは自然に返さなければいけないことは、始めからわかっていたからかもしれない。
これでようやく本当の生を生きられるのだと思うと、人間と親密な関係を築けない生き物を
人間が飼うというのは、なんだか罪深いことのように思えた。


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                        【行っちゃったね。】


これで、正真正銘、レオと俺の2人だけの生活になった。
濾過器のモーター音がしない廊下は、静かになった。 交換用フィルターも餌も
まだたくさん残っているけど、しばらくは魚を飼うこともないだろう。


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                    【 じゃあ、僕といっぱい遊んでよ。 】


レオがキューブテントの中に入らなくなった。
寒い冬の間は暖気がこもるテントの中が暖かくて良かったが、もう必要ないらしい。
夜も、寝室の俺のベッドの横に置いてあるレオ用のベッドで眠るようになった。
春はいつもここで眠るのだ。

猫は敏感だから、鯉がいなくなったことはわかっているだろう。
だから、しばらくの間は、いつもよりたくさん遊んでやろうと思う。
レオがこの家に来た時からいたのだ。
この仔の小さな胸のうちにも、きっと何か感じることがあるだろうから。


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                      【 やっぱり、ちょっと寂しいかな? 】




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ミシェル

あ!梶井基次郎って、
さぁちゃんがつぶやいていました。

お魚さんも一緒に暮らしていたのですね。
すごい立派な鯉さんです。
満開の桜の木の下で、
川に溶け込むように泳いでいく鯉さんを想像して、
さぁちゃんは目頭をあつくしているようです。

弘前っ子のさぁちゃんはいつも、
私のDNAの1%は桜、1%はリンゴって言い張って譲りません。
満開の桜の嵐、桜色に染まるお堀、
どれを思い出しても胸が締め付けられるんですって。
あの美しさには、背筋がぞくりとするそうです。

春ですね。
  • URL
  • 2013/03/24 09:41

ひろ

リアノンさん、おはようございます。

うちの裏の桃の花も満開で、鮮やかなピンクがきれいで花の付き方もかわいく大好きですが、桜の魅力は別格ですね。
昼間の桜もすばらしいですが、夜桜の怪しさには息をのみます。

鯉くんは水槽から大きな川に放されてさぞかしびっくりしたことでしょう。 50cmもあるなら天敵に狙われることもまずないでしょうし、今頃は新しい世界を満喫しているに違いない。
子供の頃、多摩川に父とザリガニをとりに行ったことを思いだしました。ずいぶんきれいになりましたね。

レオとたくさん遊んであげてください。現在我が家はパタパタトンボが人気沸騰中で、日に何度も、遊んでくれなさいと持ってきます。
  • URL
  • 2013/03/24 11:05

シオ

こんばんは、リアノンさん。

桜って何故、こんなに美しく心惹かれるのでしょうかー。。。
そして何故ネコってこんなにも可愛らしく愛しく思えるのでしょうかー。。
人間の感性とは不思議な物ですね。

鯉が今後も元気で過ごせますように・・・


  • URL
  • 2013/03/24 21:00

リアノン

ミシェルくん、こんばんはー。

春ですね~。

魚って、意思の疎通ができないし、レオに対するような気持ちがもてないや、と
思ってたんですけど、いざ、川べりに着くと、川に放すのが躊躇われました。

見送る際は、長生きしてね、俺がいなくなってもずっと、としみじみ思いましたよ。

弘前って、桜がそんなにきれいなんですか~。 
一度、桜の季節に行ってみたいです。
青森って、そういえば、行ったことないです。
紅葉の十和田湖にも行ってみたいなあ・・・・

  • URL
  • 2013/03/24 23:22

リアノン

ひろさん、こんにちは。

地方の一級河川と比べると、多摩川は都会の川だけあって、あちこちに人の手が
入り過ぎですが、それでも、こんな大きな自然があるのはありがたいなあと思います。

明け方の薄明りの中で見る桜も幽玄な雰囲気で、また別の魅力がありますよ。

  • URL
  • 2013/03/24 23:33

リアノン

シオさん、こんにちは。

本当ですね。 桜の美しさに見惚れるなんて、よく考えたら不思議なことです。
別に、人間を魅惑しようと思って咲いているわけじゃないでしょうに・・・・

釣り人のエサを喰うなよ、と思いながら、見送りました。
いつまでも元気でいて欲しいです。

  • URL
  • 2013/03/24 23:40

kei

多摩川に父親や小学校のころよく釣りに行きました。
川崎市側ですが、最近はずいぶんきれいになったようですね。なつかしいです。

さらっと書かれてますが、リアノンさんのやさしさをとろどころに感じます。
それが、何かこのブログに惹かれているのだと最近よく思います。

  • URL
  • 2013/03/25 20:34

valek

リアノンさん、こんばんは。

私は小さい頃、インコを買っていました。
ヒナから育てて、ずっと鳥籠の中にいたインコは、
外の空気を吸わせてあげる為に籠を外へ出していたとき
強風に煽られて倒れたすきに逃げてしまいました。
一年くらい一緒に居たでしょうか。
逃げたインコは、私の上を二周して飛び去って行きました。
嘘のようですけど、ほんとなんです。
決してなついていたわけでもないし、
学校から帰ると ひとこと声を掛けるくらいのものでしたが、
それでもインコは私にお別れを言ってくれたように感じました。
もしかしたら、すぐに死んでしまうかもしれない。
自分でエサを取ったことが無いんですから。
それを思うと、逃がしてしまったことはとても罪な気がしますが
それでも、一度でも空を飛べたインコは鳥として本来の姿を取り戻すことが
出来たのだから幸せだったのかな。。。と自分にとって都合のいい
解釈をしています。

リアノンさんの鯉も、きっと自由に泳げる喜びと
ちょっとだけの寂寥をもって旅立ったかもしれませんね。


桜、もう満開ですね。
うちは去年の桜の頃に悲しいことがあったんですが、
もう一年経ったのか〜。。。。と桜を見て思い出します。
あの時は悲しい桜だったけれど、それでも桜を見たいと思うのは
あの花が昔から人々の心の支えとして咲き続けてきたからでしょうか。

レオくんも花見が出来るといいですね(o^^o)
私も、毎年サイくんとずっと一緒に桜の季節を迎えたいです。


  • URL
  • 2013/03/25 21:01

リアノン

keiさん、こんにちは。

きれいな水辺には、親子連れが集まるんですね。
事故があるといけないので、ちゃんと親御さんと一緒に行かれるのはいいですね。

魚は猫や犬と違い、人と暮らすのは難しいです。
つくづく、そう思いました。

  • URL
  • 2013/03/25 23:36

リアノン

Valekさん、こんにちは。

インコのような小鳥も、難しいですね。
愛玩動物として生まれた以上は、人と暮らすのがいいのかもしれませんが、
逃げてしまった以上はどうしようもありません。
無事に暮らしていることを祈るしかありませんね。

1年前のブログ、読ませて頂きました。 お辛かったですね。
サイくんのことを大事にしてあげてください。
言い方はよくないかもしれませんが、残された者のほうが辛いですから・・・・

今、そばに居てくれる仔と、これからもたくさんの桜の季節を迎えられるよう、
お互いにがんばりましょう。

  • URL
  • 2013/03/26 17:00

カバ丸1号

昔、我が家にも鯉がおりました。
友人が、金魚すくいですくった金魚をくれたんです。
そのちっちゃな金魚には・・ん??ヒゲ??
そして、どんどん成長し・・
それに合わせて水槽を買い替え・・
最後に6匹の金魚・・いや鯉は玄関の半分近くを占拠。
これ以上おおきな水槽は、業務用になるよ~と言われ・・
近くの池に放すか・・どうしようか・・
と考えあぐねているうちに病気になって死んでしまったんです。
今思えば、公園の池にこっそり放してあげてたら・・
ごめんね~鯉さん・・
そんな気持ちを思い出させてくださった・・リアノンさんに・・
感謝!
  • URL
  • 2013/03/27 12:43

リアノン

カバ丸1号さん、こんにちは。

それって、コイヘルペスウイルス病だったのかもしれませんね。
鯉特有のウイルス性伝染病です。(人にはうつりません)

6匹の中に保菌者がいたんでしょうね、きっと。
原因はよくわかっていないそうですが、過密状態で過ごすと、ストレスで発病の
スイッチが入る、という説があるそうです。
放さないほうがよかったのかもしれません。
謎が多い病気なので、何とも言えませんが・・・・

金魚のように密度の高い生活環境での暮らしは、やっぱりよくないんだと思います。
環境は大事ですね、生き物にとっては。

  • URL
  • 2013/03/27 22:25

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2013/03/27 22:33

リアノン

庄子さん、こんにちは。

タンさんさん、と呼ぶべきか、タンさん、でいいのか迷っていたので、
よかったです(笑)。

レオはここ数日、ちょっと「甘えたさん」な感じです。
ちょっと寂しいのかもしれませんね。

関東地方は、桜は今週末までは持ちそうですよ。
晴れるといいですね。

  • URL
  • 2013/03/27 23:55

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プロフィール

リアノン

Author:リアノン
独身男の一人暮らし。

猫と暮らしたくて、一人で寂しい思いをしている子を、と思い里親募集に申し込んだら、一方的に断られた。

一人暮らしの男に猫と暮らす資格はあるのか? 

これが、このブログのテーマです。

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