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ミシガンの老婦人 (その3)

老婦人は、とても優しそうな人だった。
丁寧に彼を迎え入れ、彼のコートについた雪を手ではらって、
暖かいコーヒーを出してくれた。
こじんまりとした小さな家で、飾り気のない部屋は物も少なく質素だったが、
暖かく、掃除も行き届いていた。


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                【 寒い地域の家は、暖房がしっかりしているから。 】


彼は簡単に自己紹介した。 
アメリカに来てもう何度やったかわからない、いつものやつだ。
彼女は微笑みながらそれを聞いていた。
そして、2人は少し世間話をした。

彼女はこの家に1人で暮らしていた。 夫は数年前に病気で亡くなった。
そして、大切な1人息子を「最近の戦争」で亡くした。 
軍人ではなく民間の軍事会社に勤める社員で、物資を届けるために現地に行った際に
銃撃戦に巻き込まれて亡くなった。 窓際に置かれた小さなテーブルの上に、
夫や子供の写真が写真立てに入れられて飾られていた。


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                      【 猫の国に戦争はないけど。 】


彼女は、街のコミュニティー紙で病院にいる猫のことを知った。
そこには、ケージの中でうずくまって眠っている猫の写真が載っていた。
その写真を見て、彼女は驚いた。 子供の頃に飼っていた猫とあまりによく
似ていたからだ。

彼女は隣の部屋から1冊の古いアルバムを持ってきて、彼に見せてくれた。
薄く黄ばんだ台紙に貼られたいくつかの写真の中に、猫を抱いて椅子に座っている
小さい頃の彼女の写真があった。

その猫はミッシーという名前の雌猫で、背中の色が淡いブルーだったという。
残念ながら、アルバムの写真はモノクロだったので、その色が本当にブルーだったのか
どうかはわからないが、確かに模様の感じは病院にいる猫と似ていた。

ミッシーは家の中と外を自由に出入りして暮らしていたが、ある日を境に、家に帰って
こなくなり、そのまま行方がわからなくなった。 だから、その写真を見た時、
彼女は一瞬、迷子になって帰ってこれなくなったミッシーが見つかったのだと思った。


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                       【 ミッシーの子孫かもね。 】


あなたが病院にいるあの猫を飼うことになったら、と彼は言った。
しばらくの間、おそらく1ヶ月くらいはケージの中で飼うことになります。 骨折した
後ろ脚(実際は完全に折れているわけではなく、ひびが入っている状態)が完治する
までは安静にしている必要があるからです。 1ヶ月後に1度病院につれてきてもらい、
ケージから出していいかどうかを診ることになるでしょう。 また、脚の処置をした際に、
ついでに避妊手術もしてあるので、子供はもう産めません。 今後は外には出さず、
家の中だけで暮らすようにしてあげるべきです。 それに、飼っていくには何かと
お金がかかることになります。

それを聴いて、彼女はこう言った。
息子が亡くなった時に支給された見舞金が少しあるので、お金の心配はないわ。
それに、ミッシーがいなくなった時のような悲しみを味わうのはもう嫌だから、
外にも出さないようにするわ。 それに、この脚じゃ、いなくなった猫を探しに
行くことはできないものね。

彼は立ち上がって、コーヒーの礼を言い、コートを羽織って家を後にした。
老婦人はポーチに出て、彼のことを見送ってくれた。


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                     【 寒い日のコーヒーはおいしいね。 】


病院に戻り、老婦人のことを院長に相談した。 
院長は一通り話を聞いて、どうするかはあなたに任せるよ、と言った。
そのご婦人に直接会って話をして、家の様子を見たのはあなただけなんだからね。

家に帰って夕食を食べながら、彼は妻に今日あったことを話した。
すると、妻の顔色は少し曇った。
日本では、お年寄りには野良猫を渡さないそうよ、と彼女は言った。

彼女は、彼が最初に勤めていた東京の総合病院でナースをしていた。
その時に、入院患者達がそういう話をしているのを聞いていた。
どうして? と彼が驚いて訊くと、猫よりも早く死ぬと思われているからじゃない?
と彼女は答えた。


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                    【 奥さんに同意して欲しかったのに・・・ 】


食事の後、彼は俺宛てにメールを送ってきた。
ちょっと相談がある、という書き出しの、長い長いメールだった。
そして、この老婦人に猫を譲っていいのかどうか正直よくわからないので、
君はどう思うか率直に教えて欲しい、と締め括られていた。

俺はそのメールを何度も読み返し、次の日の夜、こう返事を書いた。



(最終回に続く)


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                        【 本当に最終回? 】




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カバ丸1号

うーーーん
私だったら、どんな返事をするだろう・・
奥が深いお話だわ・・
次回が最終回ですか??
楽しみ・・持ち越しですね~

レオちゃんの合いの手・・
どんどん磨きがかかってますね(笑)
  • URL
  • 2013/03/10 19:36

ミシェル

今、この瞬間だって、
1秒後に何が起こるかなんて、
世界中の誰にだって知りえないのに、
どうして独りだからとか、
お年寄りだからとか、
そんなことが自分以外の存在と暮らすことを許さない理由になるのだろうかと、
さぁちゃんが涙を浮かべていました。
  • URL
  • 2013/03/10 21:59

がぽりんご

難しいですね・・・。
確かにお友達の奥さんのおっしゃっているコトって、里親募集している皆さん
ほとんどの方がそうおっしゃってますもんね。
私も、責任のとれない方が飼うことに関しては、
あまり賛成ではないです。

でも、その女性が社会とつながっていて(ご近所づきあいでも習い事やパートでも)
彼女に何かあった時にすぐに他の方に気付いてもらえる環境で
さらに、猫ちゃんをお願いできる人がいるのなら、大丈夫かもしれませんね。

最終回、どうなるのでしょうか。



  • URL
  • 2013/03/10 23:26

やまのひつじ

「一人暮らしと60歳以上はお断り」って動物保護団体さんの譲渡条件に当たり前のように掲げられてますね。でも、そんな人たち(私含む)こそ猫が必要です!

たしかに先に死んでしまう飼い主もいるでしょう。
映画「レンタネコ」を思い出しました。(安心して逝っちゃってください!って)

他のかたも仰ってますが、老婦人の変化に気づけるコミュニティがあれば、よいですよね・・・。
どうなったかな?老婦人と猫ちゃん・・・

  • URL
  • 2013/03/11 00:28
  • Edit

ひろ

リアノンさん、おはようございます。

皆さんおっしゃっているように、1人暮らしのお年寄りがネコを飼えるような社会であって欲しいと思います。

私も1人暮らしなので人ごとな気がしないです。
  • URL
  • 2013/03/11 08:58

リアノン

カバ丸1号さん、こんにちは。

自分だったら・・・・、と考える心、素晴らしいですね。

いつでも、どんな時でも、そう考えられる人に、私もなりたいです。

でも、あまりにも旨く合いの手を入れられると、ちょっと、ムカッ、としたりします・・・

  • URL
  • 2013/03/11 23:30

リアノン

ミシェルくん、こんにちはー。

日本人は、あの大震災を経験して、何か変わることができると思いますかー?

僕たちは、明日、何が起こるかわからない世界に生きているのだ、ということを、
本当に学べたんでしょうかねー?

今日も、里親募集のサイトでは、そんなこんなの文言が跳梁跋扈してます。

大事なことを見失わないようにしたいですね。

  • URL
  • 2013/03/11 23:38

リアノン

がぽりんごさん、こんにちは。

おっしゃる通りだと思います。 社会とのつながりは、1つの解決策です。

私はいつも思うのですが、人は、相手に対して、あまりにも多くのことを
望み過ぎるんじゃないでしょうか。

そう望む気持ちはわかるんですが、でも、人は誰もがそんなに強いのでしょうか。

猫と暮らしたい、と思う人がいて、その人に何か足りないところが仮にあったら、
誰かが、何かが、できる範囲で、その人に手を差し伸べてあげればいいのでは
ないのでしょうか。

誰だって、ひとりでは生きてはいけないんじゃないのかなあ、と思うんですけどね。

  • URL
  • 2013/03/12 00:00

リアノン

やまのひつじさん、こんにちは。

正直、レンタネコはイマイチでした。 
でも、リヤカーに乗った猫たちは、かわいかったですね。

でも、あのレンタネコっていう制度は、今の日本のゴリゴリの保護団体の譲渡よりは
ずっと自然なような気がします。

譲渡か、貸与か、というのは人間同士のただの契約上の問題ですが、レンタネコの中では、
ちゃんと人間側の気持ちも猫と同等に尊重されてましたもんね。

やっぱり、そのほうが自然だな、と思います。

  • URL
  • 2013/03/12 00:15

リアノン

ひろさん、こんにちは。

猫の譲渡問題がややこしいのは、人間社会そのものに問題があるからです。

議論すべきは、猫の貰い手の資格ではないのです。

動物福祉のボランティアが社会的にきちんと認知されないのは、
時々、こんなふうに話が的外れになるからかもしれません。



  • URL
  • 2013/03/12 00:24

きゃぴばば

あ”あ”あ”.....また続くぅw w w

私はばーさんになっても猫を飼いますよ。
近所のお寺のご住職に後は託して
なんなら猫に看取ってもらう気満々なんです。

だいたい動物は 子供よりお年寄りの方を好むっちゅーんですよ。
ねぇ!?
  • URL
  • 2013/03/12 21:42

リアノン

きゃぴばばさん、こんにちは。

お寺のご住職、というのが、京都らしくて素晴らしい。

猫は、お年寄りの穏やかさをとても好みます。
きっと、相性としては一番いいんだろう、と思いますよ。

私も、猫に看取って貰えればこれ以上のことはない、と思っています。
猫は、年の離れた妹に託しておきます。

  • URL
  • 2013/03/12 23:25

kakobox

ん~そうでしょうと思いました。
でも、とても深い内容を含んだお話ですね、考えさせられます。
リアノンさんのブログを始められた主旨とも通じますね。

「日本では、お年寄りには野良猫を渡さないそうよ、と彼女は言った。」
↑ 
お年寄りどころか、某有名里親募集サイトは60歳になったらダメですよね。
ペット可でも賃貸物件住まいは不可。
一人住まいは不可。
源泉徴収表から預金残高まで提出しないといけないところもある。
厳しい条件をつける気持ちはわかります。
せっかく里親さんになってもらえるのなら、大事に適正に暮らせる環境をと、願う気持ちはわかります。
だけど、時には、履き違えの条件になることもある。
若くて収入があって戸建て住まいでご夫婦なら、誰だっていいのか?
本当に猫ちゃんとの暮らしを欲している人なのか?
条件に見合った方達がすべて、その後の猫ちゃんの生活を十分に全うさせているのか?

確かに里親さん募集でもらった猫ちゃんの殺傷事件はありますよね。
でも、「飛行機は落ちることがあるでしょ、だから飛行機には乗っちゃいけません。」と言ってるようなものじゃないですか?

川崎のボランティア団体「犬猫救済の輪」さんでは、シェルターを設けていて、そのシェルターの拡充に募金を多く割いているようです。
どこにももらい手の無い猫さんんが、終生そこで全うしてもいいように。
無理矢理里親さんに出さなくともいいように。
そしてもらわれた猫さんが、何らかの事情が発生した場合、速やかに返してもらえるように。
また、高齢の方にも、猫がお好きならばもらっていただき、もしものことがあった場合、引き取りができるように。
(私が読んだ時点では)
「高齢の方でも、猫ちゃんと暮らしたいという気持ちは一緒、どうか猫ちゃんと一緒に暮らしてあげてください。
あなたの去った後のことは、当方でまた引き取りましす。」
この姿勢に、共感を覚えました。

TPP問題のように、なかなか難しい問題ではありますね。

レオ君の突っ込みがピッタリで、レオ君も一緒にお話を聞いているのでしょうね。
長くキレのないコメント、失礼しました。

リアノン

kakoboxさん、こんにちは。

「飛行機は落ちることがあるでしょ、だから飛行機には乗っちゃいけません。」

わかりやすい例え話です。 そのとおりです。 頭がいい。

ボランティアにはある種の情熱や志のようなものが必要ですが、
そういうのは、バランス感を失ってしまいやすいですね。

自分と同じ考え方だけを相手に強要し、そういう人たちだけで集団化するのは、
言うまでもなく、危険なことです。

違う立場や意見による相互牽制が働かないのは、とにかく危険です。

動物福祉の世界にも、そういう新しい風が必要だと思います。

  • URL
  • 2013/03/16 17:54

シオ

リアノンさん、おはようございます。
コメ出遅れてしまいました。

難しい問題でありますね。
でも引き取る方も考えての決断なのではないかと思います。
動物好きな人はちゃんとその先行きなども考えていますよね。
私も当然、子の仔の最後まで・・・を考えて決断しました。

しかし、引き渡す側の不安もわかる気もして・・
幸せを願うからこその制限であるのかもしれませんが
やっぱり幸せになる可能性があるならばそれを繋げて欲しいと願います。

家の仔は雫です。よろしくお願いします♪
  • URL
  • 2013/03/17 07:15

リアノン

シオさん、こんにちは。

将来のことは、誰にもわかりません。
どんな居住形態であっても、この先、何があるかなんて誰にもわからないのです。

それでも、やはり、かわいそうな仔に差し出された手があるのであれば、
それを断るなんてことはして欲しくない、と思うのです。

雫くん、いい名前ですね。 こちらこそ、よろしくお願い致します。

  • URL
  • 2013/03/17 22:59

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プロフィール

リアノン

Author:リアノン
独身男の一人暮らし。

猫と暮らしたくて、一人で寂しい思いをしている子を、と思い里親募集に申し込んだら、一方的に断られた。

一人暮らしの男に猫と暮らす資格はあるのか? 

これが、このブログのテーマです。

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