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いつまでも見送り続ける朝

俺が大学2年の時、日本版エスクァイア誌にヘミングウェイのある未発表短編が
掲載されて話題になった。 平積みに置かれたこの雑誌を書店で見て、あわてて
買い求め、貪る様に読んだのを憶えている。

「A Train Trip(汽車の旅)」と題されたこの短編は、実は「新たに殺された騎士」
という途中で断筆された幻の長編の一断片で、そのために未発表のまま抽斗の中に
仕舞われていた。 彼の死後、それを短編として編集し直して新たに世に発表された。

傑作「日はまた昇る」の後、つまりそのキャリアが著しい上り坂にあった時期に
この断片は書かれたせいか、その内容は驚愕の素晴らしさだった。

父と子の物語、というのはヘミングウェイの生涯を通じての重要なモチーフの1つで、
この断片もその形式をとっている訳だが、父が子に諭すように語るいろんなこと、
汽車の中で起こる事件、それらが極めて簡素な文体で淡々と綴られていく。

この断片を含む未発表短編集を久し振りに読み返して、ここで語られる父と子の関係には
人と猫の関係がどうあるべきかについてのヒントが隠されているように思えた。


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父親は眠っている子供を優しく起こし、食事を食べさせる。 一緒に旅に出ることを告げ、
梯子を登って屋根の煙突にバケツを被せるように言い、この家で過ごした日々のことを
忘れてはいけない、と教える。 汽車の中で血なまぐさい事件の予感をいち早く察して
子供にわざと間近でそれを目撃させて、そしてかつて体験したあることを語って聞かせる。

父は子を、こうしてまるで導くかのようにして世界の一端に触れさせる。
いつもそばで静かに見守り、その意味を静かに語る。 
ヘミングウェイは、人間の日々の営みの中に神話の原型を見ていたのだろう。

情報が溢れる今、人はつい、愛猫を可愛がるあまりに行動を必要以上に制限してしまう。
安全に暮らすための細やかな配慮は必要だが、「必要以上に」そうすることはないと思う。
せっかくこの世に生まれてきたのだ、この世界のことをたくさん知って欲しい。
そして俺は、ただ、それを静かに見守ってやりたい。

ヘミングウェイは愛猫家で、晩年、キー・ウエストの家でたくさんの猫と暮らした。
猫たちはきっと幸せだっただろう、と思う。


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                    【 カメラ近すぎてウザいんですけど。 】


毎朝出かける時に、レオはお見送りをしてくれる。
いつも書斎の窓を少し開けておくのだが、ここから見送ってくれる。

歩いて行く途中、何度振り返っても、ずっとこちらを見ている。
俺の姿が見えなくなるまで、いつまでもいつまでも見送り続けている。

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                          【 どこ行くの? 】


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                          【 早く帰って来て。 】



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そばにいたい気分の時の過ごし方

木曜日の夜は、仕事で帰りが遅くなった。 おまけに大雨で、傘をさしても役に立たず、
ずぶ濡れになった。 冷たい雨に打たれると、なんだかみじめな気分になる。 

家に着くと、レオが遅いよー、と盛大に鳴いて出迎えてくれた。
ごめんごめん、と謝りながら風呂を入れて、すぐにザブン、と飛び込んで身体を温めた。
湯船に浸かりながら、レオー、と呼ぶと、ドアの隙間からレオが中に入ってきて、
両手を湯船の淵にお行儀よく揃えてかけて中を覗き込む。

今日は疲れたよ、と呟いてみたけど、レオは水面の波打つ様子をただじっと見つめていた。

金曜日は早く帰ることができたので、ゆっくりと過ごした。
のんびりと夕食をとり、ぼけーっとTVを観て、レオと遊んだ。
ひとしきり遊んだのに、その後もなぜかしつこく遊びたがった。
昨日は遊ぼうとすることなく自分からすすんで書斎に入って行ったので、
この日はレオが満足するまで一緒に遊んだ。

その姿を見ながら、この仔には俺しかいなんだなあ、と思った。
こうやってしつこく遊びに誘ってくるのも、どうも遊びたいからなのではなく、
傍にいることを確認して実感したい、というのが本当のところのように思えるフシがあった。

きっと、この仔は生まれて2ヶ月もしないうちに母親や兄弟から離されてペットショップに
連れてこられている。 その間、どんなに寂しい日々を過ごしたのだろう。
それを考えると、いつもたまらない気持ちになる。

夜、電気を消してベッドに入ると、しばらくしてレオがやってきて、
毛布の上に横たわり毛づくろいを始めた。 ベッドの上に来るのは珍しいことだった。

その音を聞いているうちに俺は眠りに落ち、途中何度か目が覚めて足下の方を見ると、
レオが毛布の上で眠っていた。 結局、朝までずっとベッドの上で眠っていたようだった。
そばにいたい気分だったのだろう。 
毎日、こうして眠ればいいのに、と思った。


今日は朝からよく晴れた1日だった。
ツタヤで借りてきたスノー・ホワイトを観ていると、レオがやってきて、
ラグマットの上で眠り始めた。 陽の光がリビングの中に差して、暖かかった。

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レオの最近のマイブームは、ボストンバッグの中に入ることだ。

我が家には、人間が使う鞄があまりない。 俺が鞄に興味がないからだ。
女性が高価な鞄をいくつも買って持っているあの感覚がよく理解できない。
でも、さすがにボストンバッグくらいはないとちょっとまずいだろうと思い、1つ買った。

すると、レオがすかさずその中に入るようになった。
どうせすぐに飽きるだろうからと思ってそのまま出しっぱなしにしてあるのだが、
毎日頻繁に中に入っている。 一体、何がそんなにいいんだろう?
なんだか、鞄に興味のない自分が間違っているのか? と思えてくる。

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                       【 なかなかいいね、これ 】


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                       【 もっとたくさん買いなよ 】



レオのために祈りを

ペットのお守りや御祈祷で知られる、市谷亀岡八幡宮へ行ってきた。

以前、母親が家に遊びにきた折に、「猫は、人に災いが降りかかろうとする時、
身代りになってその不幸を背負うから、猫を飼うのはいいことだ」と言っているのを聞いて、
これは一度お参りに行く必要がある、とずっと思っていた。

日常の些事の中ですっかり忘れていたが、先日、ぽっかりと時間が空いた時に
そのことを思い出して、行くことにした。

小さな神社内は、平日の午後で人影も疎らだった。 
本殿へ行く途中の右側に、「出世稲荷大神」という祠があった。
自分のための出世には興味はないが、経済の状況は本当にまずくて、そんな中でも
レオのカリカリを買う金は稼がねばならないので、念のためお参りをしておいた。

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この神社の隣は駿台予備校だ。 受験生もお参りに来るのだろう。
若者たちよ、頑張れ。 苦しい受験勉強も、やがては懐かしい思い出となるからな。

本殿の前で写真を撮ろうとしたら、右側からなぜか猫がやって来た。
もしかして、猫の神様?と、あわててシャッターを切る。

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ゆっくり目の前を通り過ぎると、すぐに振り返って、今度は左側からもと来たほうへ帰っていく。 

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なんだか本当に御利益があるような気がしたので、本殿では真面目にお願い事をした。

レオが、これからもずっと元気で、そして幸せでいてくれますように。
それ以外は、何も望みません。

特定の目的を持って神仏にお参りに来るのは、最初の厄年のお祓いに行って以来だった。
それ以降は自然と足が遠のいてしまって、大厄の時もお祓いには結局行かなかった。 
そんなこと、すっかり忘れてしまっていたのだ。
でも、これまでつらいことやしんどいことはそれなりにたくさんあったが、それでも
生きる希望を失わない程度で済んできたのは、何かに守られていたのかなあ、と思った。

おみくじを引くと、「吉」だった。
やがて思うままになる時がくる、心正しく過ごせ、ということだった。
でも、いつその時が来るのか、はいつも教えてくれない。

最後に社務所に寄って、レオのためにお守りと護符を買った。
ペット用らしく、どちらもとても小さいものだった。

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すっかり秋らしくなり、朝晩は涼しくなった。
毛布を引っ張り出しベッドに掛けると、レオがそこで眠るようになった。
レオはこの毛布がなぜか大好きだ。 でも、寝相の悪い俺と一緒に寝るのを嫌うので、
夜はこの毛布の上で眠れないことになるから、この毛布はレオにあげることにした。
静かな和室の一角に敷いてやると、夜はここで寝るようになった。

朝、様子を窺いに行くと、寝起き顔で迎えてくれた。
ぐっすり眠れたようで、満足げな顔をしていた。

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                      【 この毛布、返さないから。 】




目線の高さを合わせるということ

映画「カポーティ」を観た。
主演のフィリップ=シーモア・ホフマンの、その外見、声、喋り方、全体の雰囲気が、
トルーマン・カポーティ本人にあまりに似ていることで大きな話題になり、
オスカーの主演男優賞を取った。 脇役俳優として誰もが観たことのある彼が、
こうして主演としてきちんと評価されたことが個人的に嬉しかった。 
映画自体も丁寧に作られていて、よかったと思う。

大学時代、珠玉の短編集として名高い A Tree of Night(夜の樹)がどうしても
読みたくて、神保町のなじみの洋書専門店まで行って、3ドル50セントの
ペーパーバックを買った。 
その時は邦訳が絶版になっていて、原書で読むしかなかったのだ。

今でこそAmazonなどで簡単に買うことができるけれど、当時はパソコンも
インターネットも無かった時代だから、洋書を手に入れるのはかなり面倒だった。
それに今よりもっと円安だったから、値段も高かった。 この本だって、860円だった。
それでも、ペーパーバックが欲しい時に簡単に見つかったのは幸運だったのだ。
店に在庫が無ければ本国から取り寄せるしかなく、入手するまでに1か月近く
待たなければいけない、そういう時代だった。

でも、全部読み終わる直前になって新潮社から邦訳が復刊されて、なんだよー、
と思ったが、原文と読み比べてみて、ああ、この本はこうして原文で読んだほうが
よかったんだな、ということがわかった。

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例えば、The Headless Hawk(無頭の鷹)という有名な短編の冒頭に、

A promise of rain had darkened the day since dawn, a sky of bloated clouds
blurred the five o'cloch sun ; it was hot, though, humid as tropical mist,
and voices, sounding along the grey July street, sounding muffled and strange,
carried a fretful undertone.

という文が何気なく出てくるけど、日本語にするとどうってことのないこの内容も
カポーティはこんな素晴らしい英文にしてしまうから、20数年経った今でも
このセンテンスが忘れることなく、記憶にしっかりと刻まれていたりする。
トルーマン・カポーティは、そういう作家だった。

そんなことを思い出しながら映画を観ている俺の横で、レオも真似して座っていた。

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子供の頃は腹や脚の上に乗っかってきてそのまま眠るような仔だったが、大人になると
野性の警戒心が出てきて、身体の上に無邪気に乗るようなことはなくなり、
俺の様子を窺ったり、何かをする時はこちらに同意を求めるようなそぶりを見せることが
たまにでてきた。 小さなこの仔に175cmの俺は大魔神のように見えるだろうから、
まあしかたないと思う。

でも、ソファーに座って映画を観ている時は目線の高さがあまり変わらないせいか、
安心して傍に来る。 だから、時々、床に腹這いになって、部屋の中を見渡してみる。
この仔の眼に、この世界がどう映っているのかが知りたいからだ。 

目線を変えることで、普段は気が付かない危険な場所がわかるかもしれないし、
俺の姿がどのように見えているかもわかるような気がする。
そうすることで、この仔の気持ちにもっと近づけるような気がする。


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                      【 地べたは気持ちいいー 】



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プロフィール

リアノン

Author:リアノン
独身男の一人暮らし。

猫と暮らしたくて、一人で寂しい思いをしている子を、と思い里親募集に申し込んだら、一方的に断られた。

一人暮らしの男に猫と暮らす資格はあるのか? 

これが、このブログのテーマです。

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